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2008年12月アーカイブ

2008年12月5日に開催しましたアジア太平洋研究所推進協議会セミナーに関する記事が、毎日新聞12月23日朝刊に掲載されました。

 

◆日本の立ち位置
 日本の立ち位置はどうだろうか。
 まず貿易構造の変化に目を向けてほしい。対米貿易の比重は今年、14%に落ちた。代わりに中国(17%)と、香港、シンガポール、台湾を加えた大中華圏(26・6%)、アジア(44・9%)の比重が高まり続けている。中国と大中華圏の関係は企業経営に例えると、単体と連結で、中華系の人が中国本土と有機的な連携を加速させている。
 貿易構造のアジアシフトは太平洋側港湾の空洞化を招いている。07年の世界港湾ランキングは、(1)シンガポール(2)上海(3)香港(4)深セン(5)釜山(6)ロッテルダム(7)ドバイ(8)高雄(9)ハンブルク(10)青島の順。大中華圏の港湾が目立つ。日本の港湾は20位以下である。
 物流の変化は産業構造の変化を意味する。かつてランキング2位だった神戸は39位に転落。それまで神戸を経由していた日米を結ぶ太平洋航路が、今はいったん釜山に入り、日本海を抜ける日本海航路にシフトしている。中国―米国間の主力航路も日本海を通る。
 太平洋側を「表日本」、日本海側を「裏日本」と呼ぶ人がいるが、これは戦前にはなかった考え方。米国中心の貿易・外交戦略と、冷戦による社会主義国家との隔絶が背景にあるが、これからは「表」と「裏」を反転させて考えないとだめだ。また、「日本は通商国家で、取引相手のナンバーワンは米国」という「常識」も反転させるべきだ。
 世界で一番貿易量が伸びているのは実はロシア。天然ガスと石油の輸出によるもので、ロシアは世界一の化石燃料生産国である。そのロシアは今、極東、アジア、日本への関心を強めている。北方領土問題にメドベージェフ大統領が柔軟な発言をしているのはその証拠で、日露関係を大転換するチャンスだ。
 12年にはウラジオストクでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれる。私も何度か訪れたが、スーパーには日本の果物が並び、街中には日本車があふれている。800万円の日本の中古車が飛ぶように売れるほど、経済が活気づいている。
 ヒトの動きも見てみよう。06年、中国を訪れた日本人の数(377万人)が初めて米国を訪れた数(367万人)を抜いた。訪日外国人も07年、米国は81万6000人、中国は94万3000人で、初めて逆転した。ちなみに韓国は260万人、大中華圏では291万2000人を数える。
 韓国は今、自信喪失状態に陥っている。逆に日本の産業力・技術力に対する評価が高まっているのも事実だ。
 なぜ韓国経済がそれほどまで落ち込んだか。GDP(国内総生産)に占める貿易の比率が76%と高く、極度に外需に依存しているためだ。日本は28%にとどまる。また、現代、LG、サムスンの3大企業グループの売り上げがGDPの35%を占め、3社の経営が揺らげば国全体が傾く構造になっている。
 ◇「実体化」と「自律化」目指せ
 ◆再生のシナリオ
 この危機に日本はどう対処すべきか。「実体化」と「自律化」の二つのキーワードを提示したい。
 これまで虚構の産業である金融に振り回され過ぎてきた。実体経済である産業と技術に焦点を当てるべきだ。
 また、「国土が狭い資源小国」「食糧は外国から買う」という固定観念から脱却し、蓄積した産業力を注入してエネルギーと食料の自給率を高める必要がある。海底熱水鉱床に眠る希少金属などの海洋資源は膨大だ。資源大国になるシナリオは絵空事ではない。
 そこで「アジア太平洋研究所(仮称)」構想である。JR大阪駅前(梅田北ヤード)開発が進んでいるが、重要なのは箱物(建物)ではなくコンテンツ(中身)である。ヒト、モノ、カネを関西に引き付ける「磁場」が必要だ。
 中東情報が集積するパリのアラブ世界研究所や、約15の国際機関がひしめいて年間40万人の国連関係者と100万人のジャーナリストや専門家が訪れるスイス・ジュネーブのように、関西に来ざるを得ない情報の集積点を作る必要がある。
 その情報の磁場として、アジア太平洋研究所の設立を提唱した。官補完型の政府系シンクタンクや、収益性に縛られる企業系シンクタンクではない、中立のシンクタンクを北ヤードにつくりたい。